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統合レポート

 



変化のタイミングが大きな飛躍のチャンス
 新型コロナウイルス感染拡大によって、世の中、そして世界が大きく変わろうとしています。このパンデミックによって起きた、人々の嗜好や働き方の変化は、国内外でのデジタルトランスフォーメーション(DX)や5G(第5世代移動通信システム)の導入などによってさらに加速していくのは間違いありません。こうした変化のタイミングは、私たち加賀電子グループにとって、大きな飛躍のチャンスなのです。
 加賀電子グループは1968年の創業から今年で53年目を迎えましたが、この半世紀を振り返ると、オイルショック、リーマンショック、東日本大震災、タイ大洪水など数々の危機があり、そのたびに世の中の流れが大きく変わってきました。こうしたなかにあっても、当社は変化にすこぶる強く、時代の波に飲み込まれることなく、ピンチをチャンスに転換してきました。
 さらに、私たちが直面する、さまざまな社会課題の解決に向けた企業の取り組みに対して社会的要請が高まっています。新規事業をはじめ加賀電子グループならではのSDGs(サスティナビリティ)経営を推進することによって応えていきたいと考えています。
お客様の話をよく聞き、全力を尽くす
 では、いかにして時代の波に先駆けるのか――「すべてはお客様のために」を経営理念に掲げるとおり、その秘訣はお客様の話を「よく聞き」、そのお困り事の解決に「全力を尽くす」ことに尽きます。解決を図ることがお客様のためになり、新規事業の立ち上げなどを通じて、私たちの成長にもつながるのです。
 お客様のお困り事に応えるには、私たちは日ごろから「何でもお役に立とう」「お話をいただいたら先ず動いてみる」「ノーと言わずやるだけやってみる」と考え、感度を高め、情報収集しなければなりません。すると、ヒントになる情報や人が現れ、チャンスを広げることができるのです。コロナ禍で目の当たりにしたように、世の中が変わるとき、求められる製品やサービスは一夜にしてガラリと変わります。
 こうしたチャンスを捉えた提案、新規事業の立ち上げは、役員も社員も平等です。自ら手を挙げ、“ 経営者”としての自覚をもって実行する。私は社長時代から、積極的なアイデアは“ 来るもの拒まず主義”を貫いてきました。
 一緒になってうまくいく方法に知恵を絞り、一緒に戦い、一緒に責任を取ってきました。失敗も山ほどありましたが、こうした挑戦があったからこそ、60社以上ものグループ企業を擁するまでに成長できたのです。
 このように当社には、事業の発展に不可欠な柔軟な発想と行動力があります。さらに、テレワークやオンライン授業といった、新型コロナウイルスで急浮上したニーズにトータルに応えていけるだけの営業力、情報・生産ネットワーク基盤が備わっているのです。
自由な発想で新たなビジネスに挑戦するDNAを発揮
 依然として終息が不透明なパンデミックの行方、そしてDXや米中貿易摩擦などを背景に、国内外メーカーのサプライチェーンのグローバル化も新たなステージを迎えています。そして、今後の産業構造のさらなる変化を考えると、グローバル市場においては売上高2、3 兆円規模の世界的なグループとの競合も避けて通ることはできません。
 加賀電子グループが中長期ビジョンで「売上高1 兆円」を掲げたのは、次の50年を勝ち抜く、新たな成長軌道を描くことにありました。近年、加賀FEI、加賀EMS十和田、エクセル、旭東電気をグループ会社に加えたのも、それぞれの得意分野を持ち寄り、単独では成しえないグループでのシナジーを発揮し、この目標を到達したいと考えたからに他なりません。
 加賀電子グループはこれからも、社員一人ひとりがやりがいをもち、自由な発想で新たなビジネスに挑戦するDNA、先手必勝のベンチャースピリッツを発揮し続け、さらに大きく飛躍する企業グループでありたいと考えています。


2021年3月期の振り返り
 当期の世界経済は、年度前半において新型コロナウイルス感染拡大の影響により、断続的なロックダウンにともなう需要落ち込みや一部製造業における生産停止など厳しい状況が続きました。こうしたなか、当社グループは、国内外とも従業員の安全を最優先にグループ経営にあたりました。そして、2019年4月よりスタートした3ヵ年計画の「中期経営計画2021(2019‐2021)」の中間年度として、成長戦略の両輪である電子部品販売ビジネスと、ものづくりのEMSビジネスの拡大に向けて、さらなる競争力強化に注力しました。
 その結果、営業利益は2期連続で最高益を更新し、前年同期比14 .5%増益の114億67百万円となりました。私は、当社の“ 稼ぐ力”が進化し、100億円超の営業利益を安定的に創出できる収益体質が整ったと評価しています。
 これを連結ベースの営業利益の推移で見ると(グラフ左)、2019年3月期に、加賀電子本体より収益性の低い加賀FEIをグループ会社化した影響で、売上高総利益率が2年連続で低下しましたが、2020年3月期に反転を遂げています。
 次に、このトレンドを加賀電子本体で見ると(グラフ右)、売上高総利益率は10年前の12%台から13%台、そして直近の14 .5%と、右肩上がりに上昇しています。これに対して販管費率は10%台に抑えており、直近では9 .99%と、ようやく10%を切るところまでになりました。
 当社にとって中長期ビジョンに掲げた売上高1兆円の実現には、これからもM&A戦略は重要です。私は、この戦略実行にあたっては、「利益重視の経営」の手綱を緩めることは決してありません。
 このように加賀電子本体の収益体質が盤石であり続ける限り、当社グループの利益成長は持続可能だと確信しています。


新型コロナウイルス感染拡大への対応状況
加賀電子グループでは、政府および地方自治体の指導に従い、「テレワーク/時差通勤」等の安全対策を徹底して営業を継続しました。緊急事態宣言下では出社率2割目標に人流を抑制しました。生産拠点では、国内は政府および地方自治体の指導に従い、安全対策を徹底して操業を継続しました。一方、海外は、上期前半はロックダウンにより一部拠点で操業休止を余儀なくされましたが、ロックダウン解除以降は安全対策を徹底しつつ、操業を継続しています。


成長戦略の両輪のさらなる競争力強化
 当社グループが属するエレクトロニクス業界においては、テレワークやオンライン授業の導入が急速に拡がり、パソコン関連需要が大幅に拡大いたしました。コロナ禍による移動自粛のなかでの巣ごもり需要を背景にDIY 関連の工具や工作機器も伸長し、第1四半期に各国のロックダウンによって低迷した自動車販売の回復に伴い、車載関連市場も堅調に推移いたしました。
 このような環境のなか、部品販売ビジネスでは、2020年4月より電子部品商社の同業である株式会社エクセルをグループ会社に加え、取り扱い商材や顧客の共有・拡大に取り組みました。一方、EMSビジネスでは、2020年11月に、旭東電気株式会社をグループ会社化し、同社が鳥取県に持つ工場群を西日本地区におけるEMS 拠点とし、青森県の加賀EMS十和田株式会社と併せて、当社の国内生産体制強化に努めました。また、2020年12月には自動車産業が集内外において生産能力の増強を図りました。
 また、2019年1月にグループ会社化した加賀FEI 株式会社のPMIの進捗としては、2021年3月期は、既存の有力顧客124社に対してEMSのアプローチを行い、開発試作、量産など8社から11件を受注しました。これと併行して、新規商材の開拓も積極的に進め、累計で90社と新たな取引を開始し、新規商材による売上高は2021年3月期、126億円となりました。2022年3月期は、約200億円を見込んでいます。このように、部品販売、EMS両面で営業活動に注力し、事業拡大に取り組みました。
指名・報酬委員会の設置
 当社では、社外役員の助言・指摘を通じた取締役会の監督機能強化により、経営の戦略性・客観性をより一層高めるため、2021年6月29日開催の定時株主総会の決議をもって、社外取締役を3名から4名に増員しました。これにより、取締役全体に占める社外取締役の割合は3分の1以上となりました
 さらに取締役会の監督機能の強化、コーポレート・ガバナンス体制の充実を図るため、2021年6月に取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置しました。
 指名・報酬委員会は、独立社外取締役が委員長および過半数の委員を占めており、取締役会の諮問に応じて、取締役、監査役の選任・解任に関する事項、役付取締役の選定・解職に関する事項、取締役、監査役の報酬に関する事項、その他経営上の重要事項で、取締役会が必要と認めた事項について審議し、取締役会に対して答申を行っていきます。
サステナビリティ経営の推進
 当社グループは、エレクトロニクスを通じた豊かな未来づくりに向けて、当社が果たすべきCSR(企業の社会的責任)を遂行しています。さらに、事業を通じたSDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献の一環として、社会の持続的な成長に向け、保育、福祉、介護などの分野で社会課題解決を起点とした新規ビジネスの創出を進めています。
 このような当社のCSRおよびESGへの対応を進化させ、グループ全社で横断的にサステナビリティ経営を推進するため、2021年4月に「SDGs 委員会」を設置しました。
 SDGs委員会では、私を委員長に、各部門統括役員などを委員として構成し、その直下に「環境」「社会」「ガバナンス」のワーキンググループを配し、これらESG課題に対する方針や施策・目標の策定、進捗状況のモニタリングなどを行っていきます。経営会議、CSR推進委員会と並ぶ、社長直轄の会議体と位置づけ、経営トップのコミットメントのもと、事業部門と連携し、SDGsへの取り組みを継続的に展開していきます。
 「環境」では、「脱炭素社会」の実現に貢献するため、国内外の事業所において「再生可能エネルギー」の積極的な利活用などについて検討を進め、「RE100」への加盟を目指します。
 なお、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示を今後本格化すると考えられるため、環境ワーキンググループでは、TCFDへの賛同表明を視野に入れた開示拡充の取り組みをスタートさせています。
 「社会」では、女性活躍・活用を含めた「ダイバーシティ」の推進や「働き方改革」「健康経営」などについて取り組みます。
 「ガバナンス」では、定期的に改訂されるコーポレート・ガバナンス・コードについて継続的に対応することで、株主をはじめすべてのステークホルダーにとって当社が「価値ある企業」であり続けたいと考えています。
2022年3月期の見通し
 2022年3月期は引き続き、新型コロナウイルス、とりわけ変異株の世界的な感染拡大による世界経済への影響が懸念されます。各国におけるワクチン接種の普及とともに経済活動は徐々に正常化しつつあるものの、変異株による再度の感染拡大などのリスクも想定しておく必要があるなど、国内外の経済は先行きの不透明感が拭えません。
 当社グループが属するエレクトロニクス業界では、半導体の需給逼迫などサプライチェーンの一部では混乱が見られるものの、ICT領域では「5G」の本格導入、「IoT」や「AI」の高度化や複合化による新たな需要創出、「EV(電気自動車)化」「CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)」に象徴される自動車のさらなる電装化・電脳化など、中長期的に電子部品需要が拡大する見込みです。
 このような前提のもと、「中期経営計画2021」の最終年度となる、2022年3月期の業績予想を以下の通りとし、総仕上げに取り組みます。
 本計画の策定時には織り込んでいなかった加賀FEIの主要取引先との代理店契約解消(約1,000億円の売上喪失) や新型コロナウイルスの世界的大流行の影響もあり、売上高は経営目標5,000億円の達成には現時点ではまだ乖離を残しておりますが、目標は取り下げず、引き続き達成にチャレンジしていきます。営業利益は、逆風のなかでの「利益重視の経営」の推進が奏功し、3期連続の最高益更新とともに、経営目標130億円の達成を目指しております。また、ROEは2021年3月期に1年前倒しで目標をクリアしました。2022年3月期も引き続き、株主資本コスト※を上回る、ROE8%以上を安定して維持できる経営を進めていきます。
 当社はこれからも、「すべてはお客様のために」の経営理念のもと、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての持続的な成長」をより高い次元で両立することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
2022年3月期の通期業績予想

2021年3月期の振り返り
 2021年3月期の売上高は4,223億65百万円で、前年同期比4 .8%減となりました。株式会社エクセルをグループ会社化したことによる増収効果があったものの、加賀FEIの主要取引先であるCypress社などとの代理店契約解消の影響が残り、前年を下回りました。この特殊要因を除けば、コロナ禍の影響を跳ね返し、堅調に推移しました。営業利益、経常利益ともに2021年2月4日公表の業績予想を超過し、2期連続で最高益を更新しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、エクセル買収に伴う「負ののれん発生益」(79億63百万円)を計上し、インド、メキシコの新設EMS生産拠点などに係る減損損失などを織り込んで特別損益において32億30百万円の特別利益を計上した結果、113億99百万円と大幅な増益を達成しています。
 2021年3月期の業績を会社別に見ていくと、以下のようになります。なお、以下の加賀電子には、加賀FEI、エクセルを除くグループ会社が含まれます。
 売上高では、加賀電子はコロナ禍の影響を跳ね返し、8億86百万円の増収となりました。エクセルの連結化によって新規に465億35百万円が加わりましたが、加賀FEIの大口代理店の商圏喪失による686億51百万円の減収を補い切れず、グループ全体としては212億49百万円の減収となりました。
 売上総利益につきましては、加賀電子が19億74百万円の増益、加賀FEIが34億円の減益、エクセルの23億65百万円の寄与があった結果、グループ全体では9億20百万円の増益となりました。
 売上高総利益率では、加賀電子が13 .7%から14 .5%に増加、加賀FEIも6 .8%から7 .8%に改善しています。これにエクセルの5 .1%が加わり、グループ全体としては10 .6%から11 .3%に伸長しました。エクセルは低マージンの液晶ビジネスが中心ですが、国内事業についてはローコストオペレーションを徹底することにより、利益率が大きく改善しつつあります。
 一方、販管費では、加賀電子、加賀FEIともに経費削減に努めた結果、加賀電子は10億11百万円、加賀FEIは17億50百万円の削減を達成しました。
エクセルの22億30百万円が加わった結果、グループ全体としては5億32百万円の削減となりました。なお、加賀電子の販管費には、加賀EMS十和田と旭東電気による増加分が含まれており、従来ベースの削減額はこの表記額を上回ります。
 営業利益では、加賀電子が31億55百万円の増益となりました。加賀FEIが17億23百万円の減益に、エクセルの6百万円の増加要因があり、グループ全体で14億52百万円の増益となり、114億67百万円となりました。営業利益率でみても、加賀電子が3 .3% から4 .5%に大幅に改善した結果、グループ全体の営業利益率は2 .3% から2 .7%に改善しています。
 なお、財政状態では、負債合計が205億53百万円増加し、1,419億42百万円となりました。棚卸資産が60億40百万円増加し379億48百万円となり、在庫回転日数が26 .3日から32 .8日に悪化しました。売上債権回転日数、仕入債務回転日数はそれぞれ、75 .2日から93 .7日、64 .6日から79 .8日となりました。これらは、いずれもエクセルの連結化に伴うものです。
 当社は創業当時から「在庫は罪の子」という加賀イズムを継承し、今日でも「在庫回転日数の最短化」を不変の経営テーマと位置づけています。「部品ビジネス15日、EMSビジネス45日」を適正在庫回転日数の目安としており、適正化を図っていく方針です。


EMSビジネスが順調に伸長
 中計セグメント別の売上高では、電子部品ビジネスが2,623億18百万円(10 .4%減)、EMSビジネスが995億99百万円(6 .7%増)、CSIビジネスが483億89百万円(11 .3%増)、その他が120億57百万円(13 .3%減)となりました。
 EMSビジネスは、コロナ禍で一部の海外生産拠点がロックダウンの影響を受けましたが、第一四半期で底打ちし、経済活動の再開が早かった中国での回復が牽引し、年度半ばから車載、産業機器向けを中心に需要が急回復しました。
 車載向けは、数年先までの受注が把握できており、3年後には現状から倍増し、全体に占める割合も50%超となることが予想されています。自動車業界に偏ると、その浮き沈みの影響を受けてしまうため、成長性の高い医療機器向けや、産業機器向けなどの拡大を図っていきます。
 車載向けではACインバーターが好調で、LED照明ユニットがメキシコ、インドで生産拠点を増加させたことにより、数量を伸ばしています。マイコンやSoC(システム・オン・チップ)に強い加賀FEIが加わることにより、お客様の開発段階からのアプローチが可能となり、キーデバイスにその周辺も合わせた提案を通じたEMSビジネスの拡大が期待されます。


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