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統合レポート COOメッセージ

2023年3月期の振り返り
 当社グループを取り巻く国内外の経済情勢は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和に伴い、社会経済活動の正常化が進み、半導体不足やサプライチェーンの混乱も緩和するなど、景気は緩やかな回復基調となりました。一方で、長期化するロシア・ウクライナ情勢の影響により食料やエネルギー価格が高騰するなか、インフレ対策としての政策金利の引き上げによる為替相場の急変や金融システムの不安など、先行きの不透明感が続いています。
 当社グループが属するエレクトロニクス業界では、一部の半導体や電子部品において継続していた供給不足や長納期化は概ね解消し、広範な産業分野からの需要は高水準で推移しました。
 当社グループの中核事業である電子部品事業においては、車載関連向けや医療機器関連向けを中心に、部品販売ビジネス、EMSビジネスとも販売が大きく伸長しました。情報機器事業では、高価格帯のPC製品やセキュリティソフトの販売およびLED設置ビジネスが伸長しました。ソフトウェア事業では、スマホ向けゲーム制作やCG制作の受注が回復しました。その他事業では、PC製品などのリサイクルビジネスが堅調に推移しました。
 これらの結果、すべての事業セグメントで増収増益となり、売上高から親会社株主に帰属する当期純利益に至るすべての項目で過去最高を更新しています。
 具体的には、売上高は、前期比22.6%増の6,080億64百万円となりました。営業利益は、売上増加そして売上総利益率が0.7ポイント改善したことにより売上総利益が増加し、54.2%増の322億49百万円、経常利益は52.6%増の327億39百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は49.8%増の230億70百万円となりました。売上高は2期連続、営業利益、経常利益は4期連続、親会社株主に帰属する当期純利益は3期連続で過去最高を更新しました。
2024年3月期の業績見通し
 電子部品業界では、コロナ禍での大幅な需要増からの反動や景気後退リスクを背景とした顧客の在庫調整の影響などにより、半導体・電子部品への需要は一時的に減退することが予想されます。このような状況に鑑み、2024年3月期(以下、今期)の売上高は5,500億円、営業利益、経常利益も250億円、親会社株主に帰属する当期純利益は180億円と、減収減益を予想しております。この結果、EPSにつきましては685.42円、ROEは13.3%となります。
 この業績見通しを、営業利益の変動要因の分析に基づいて、もう少し詳しくご説明いたします。
 2023年3月期の営業利益の増益額113億34百万円の内訳を見ると、販売数量・販売ミックスで175億38百万円、スポット販売で4億29百万円、そのほか為替換算で17億82百万円それぞれ増加し、ここから66億33百万円の販管費の増加を差し引いて322億49百万円に着地しています。
 2024年3月期の見通しでは、販売数量・販売ミックスで48億83百万円、スポット販売がなくなることで46億31百万円がそれぞれ減益要因となる一方、販管費の削減22億65百万円の増益要因を織り込むことで250億円を確保します。前期比72億49百万円の減益見通しはこのような要因によるものです。
電子部品の市場変動に向けた当社グループの取り組み
 このようにスポット販売は、半導体や電子部品の需給状況が改善されれば、いずれはなくなる性質の取引であるため、お客様に代替品を提案し、販売することで継続性のある収益につなげる取り組みを強力に推進してきました。
 2023年3月期は、88社(既存71社、新規17社)のお客様に「代替提案・代替販売」を行い、約70億円を売り上げました。今期につきましても、ほぼ同数のお客様に対して約75億円の販売を見込んでいます。
 製品別では、パワー半導体、FPGA、アナログICが全体の過半を占めています。業界別では、産業機器、民生機器、車載の順となりますが、今期は車載向けが大きく伸びると予想しています。
『中期経営計画2024』の進捗状況
 『 中期経営計画2024』の営業利益とROEの目標を2年前倒しで達成した2023年3月期決算、そして今期の業績見通しにおけるアップサイド、ダウンサイドを踏まえ、同計画の経営目標を見直しました。
 計画期間は、2022年度から2024年度までの3ヵ年計画とすることに変更はありません。最終年度の売上高も、「自律成長で6,000億円、新規のM&Aへの挑戦もカウントして7,500億円」の当初計画に変更ありません。
 一方、営業利益は、「300億円以上 」に見直しました。ROEは、営業利益の見直しに合わせ、「安定的に10%以上」としています。
営業利益の目標見直しと増減要因の方向性
 営業利益は、今期は一旦減益になるものの、2025年3月期は再び成長フェーズに戻ることを見込んで「300億円以上」としました。
 その要因として、販売数量、スポット販売、EMS事業拡大、PMI、人的投資の別に年度ごとに方向性として、青色の矢印は増益要因、赤色の矢印は減益要因として図解しました。
 2023年3月期まで4期連続で営業利益の最高益更新を牽引してきた電子部品事業およびEMS事業について、今期は景気後退リスクや一時的な在庫調整の影響、スポット販売の剥落などにより減益要因になると予想しました。
 2025年3月期以降、「EV化」「5G/6G」「IoT」「AI」といった中期的な需要拡大のシナリオを想定していることに変わりはありません。一方、買収会社の収益性改善(PMI)は今後も継続することを見込んでいます。また、給与・賞与など人的投資についても引き続き積極的に取り組んでいきます。
ROE目標の見直しに関する考え方
 次にROEの目標見直しについて、ROEの推移を3つの構成要因に分解したグラフにより、その考え方をご説明します。
 棒グラフの一番下にある当期純利益率は、営業利益率を5.0%程度とみて「3.0~3.5%」としています。ROEの向上には、高利益率を維持することが一番のポイントだと考えています。二つ目の財務レバレッジは自己資本比率を40~50%程度とみて「2.0~2.5倍」に、三つ目の総資産回転率を現状の「2回転前後」に設定すると、ROEは12~15%程度は、安定的に稼げるものと考えています。
 このような試算を前提に、ROEの目標を「安定的に10%以上」としました。なお、当社の株主資本コストは大体7~8%程度と認識していますので、それを優に上回るところに目線を置いています。
取締役会をスリム化し、ガバナンス体制を強化
 経営の監督機能と執行機能をより明確にして経営の透明性を高めるとともに、取締役会の更なる活性化と迅速な業務執行を目的として、取締役会の員数および構成を見直しました。
 2023年6月27日に開催されました定時株主総会での決議により、取締役会の構成を、これまでの「社内7名+社外4名、計11名」から「社内3名+社外3名、計6名」に変更しました。
 一方、取締役会の多様性については、今回の株主総会には女性取締役候補の上程はできませんでしたが、将来の監査等委員会設置会社への移行も念頭に、大柳京子氏に社外監査役に就任いただきました。
2023年3月期の配当水準を堅持
 2023年3月期の1株当たりの配当は220円で過去最高の配当となりました。今期は減益予想ではありますが、配当予想を220円に据え置きました。これは、目まぐるしく変化する事業環境により、単年度業績は変動するものの、長期に保有していただく株主様を念頭に配当水準を維持することが望ましいと判断したことによるものです。本年2月に3年ぶりに再開した海外IR活動において、投資家の皆様とのディスカッションで「長期保有の投資家にとって減配は致命的」などの生の声に接したことも貴重な機会でした。
 加賀電子グループはこれからも、「すべてはお客様のために」の経営理念のもと、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての持続的な成長」をより高い次元で両立することで、持続的な社会の実現に貢献していきます。


『 サステナビリティ中長期経営計画 』の進捗

当社は2021年11月に『サステナビリティ中長期経営計画』を策定いたしまし た。「すべてはお客様のために」の経営理念のもと、「持続可能な社会の実現」と「持続的なグループの成長」の両立を目指したサステナビリティ経営を推進していきます。取り組みにあたっては、お客様、取引先、株主・投資家、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーとの対話を尊重し、持続可能な社会の実現に積極的な役割を果たすとともに、企業価値の向上を目指していきます。
サステナビリティ方針
 加賀電子グループは、「すべてはお客様のために」の経営理念のもと、「持続可能な社会の実現」と「持続的なグループの成長」の両立を目指します。
 その取り組みにあたっては、「CSR基本方針」「環境方針」ならびに「行動規範」に基づき、お客様、取引先、株主・投資家、従業員、地域社会など全てのステークホルダーとの対話を尊重し、持続可能な社会の実現に積極的な役割を果たすとともに、企業価値の向上を目指します。
『 サステナビリティ中長期経営計画 』の進捗