一生懸命稼ぐ社員が働きやすい環境・関係をつくる
会社は、何のためにあるのかーー私の考えは創業以来、一貫しています。それは、「創業者は私だが、会社は私のものではない。社員が稼ぎにくる場所、つまり社員のものだ」ということです。そのため、加賀電子の経営は「ガラス張り」です。
社員は、私にとって価値観をともにする仲間です。日々創意工夫して働き、会社の利益を稼いでくる社員たちに対して、「成果を分かち合う」という考え方で接しています。これに応えるように、社員は当事者意識を持って常に仕事に臨み、結果として「全員経営」になっていると感じています。
そしてもう一つ、「公私混同はしない」ということです。社員は皆、一生懸命稼いでいるのですから、社員を大事にし、しっかりとコミュニケーションをとるのは当然のことです。
いかに時代が変わろうとも、会社は社員のためにあり、社員が稼がなければ、会社は存続しない、だから社員を大事にしなければならないという信念は変わりません。
今回、一部の役職員においてパワーハラスメント行為があったことは創業者として真摯に受け止めております。社員皆にとって安全で、働きやすい環境を維持することこそが、当社グループの基本姿勢であるべきと、改めて思い知ったところです。
なぜ、加賀電子は生き残ることができたか
私が加賀電子を創業した1968年頃の秋葉原では、電気機器メーカーのエンジニアが試作品をつくるために自ら足を運び、部品を購入していました。この様子を見て私は、わずか2坪の事務所でしたが、秋葉原にある地の利を活かし、「電話一本で必要な部品をそろえて届けます」をセールストークに、お客様を開拓していきました。そして、お客様が徐々に広がってくると、業種を問わず、「このようなことはできないか」とご相談をいただく機会も増えていきました。
「すべてはお客様のために」「NOと言わない」をモットーに“便利屋”としてスタートしましたが、日本にないものは海を越えてでも探し出す当社の「行動力」「調達力」をご評価いただき、刻々と移り変わる“今必要とされる”部品を集めることに留まらず、キッティングする、そしてユニット化してお届けするようになったことが、現在のEMS事業、加賀電子グループならではの「ものづくり」につながっています。
一方で、“世の中がこれだけネット社会になったのだから、商社なんていらない”との無用論を耳にします。しかし、半導体不足のとき、ある製造業のお客様がたった一つの半導体が入手できないがために製品の生産が困難な事態となり、当社が世界中のネットワークを駆使して何とか調達したということがありました。このようなことが、いつ何時でも起こり得るのが現実世界なのです。
栄枯盛衰が激しい半導体・電子部品業界、地政学的リスクの高まり、誰にも予想しがたい産業・貿易政策の変化の中で、資本市場からは資本効率を強く要請される世界の製造業は、ますますモジュール化、ユニット化による外部調達への依存度を高めています。
創業当時、大小1,000社近くあった電子部品商社は、今や200社程度にまで淘汰されています。では、なぜ当社が生き残ることができたかーーそれは、50年以上にわたって当社が培ってきた“人の縁”、そして、社員の力です。「お客様のためにまず動く」集団だからこそなせる技であり、他社には一朝一夕に真似できない加賀電子ならではの強みです。そして、「社員の成長なくして企業の存続はあり得ない」という私の創業以来の信念が当社の隅々にまで浸透しているからにほかなりません。
和歌山県と大規模災害に備えた協定を締結
加賀エアロシステムは2025年8月、和歌山県と「大規模災害時の航空機による輸送活動の協力に関する協定」(以下、本協定)を締結しました。
本協定は、和歌山県内で南海トラフ巨大地震等による大規模災害が発生し、陸上の交通手段が寸断された場合、同社が同県の要請を受けて、生活必需品などの救援物資や、医師などの災害応急対策実施のために必要な人員および資機材を、ヘリコプターで輸送活動に当たることを目的としています。
同社は和歌山県南紀白浜空港を拠点に、ヘリコプターの運航受託をはじめ、機体整備や操縦士育成、機体や関連機器・部品の輸出入・販売・賃貸等の回転翼航空機事業を行っています。2022年12月より、和歌山県から消防防災ヘリコプター「きしゅう」の運航を受託するとともに、2023年3月には、より安全性を高めた米国ベル・ヘリコプター・テキストロン社製の新機体を納入しました。
<中央> 和歌山県知事 宮﨑 泉氏
<右> 加賀エアロシステム 代表取締役社長 杉本 正司