2024年3月期の業績変動要因の分析
2024年3月期の当社グループの業績は、売上高が前期比654億円減収の5,426億円、営業利益が前期比64億円減益の258億円となりました。
減収要因としましては、主に三点あります。一つ目は、エクセルにおける特定大口顧客向け取引の縮小により228億円の減少、二つ目は電子部品事業におけるスポット需要消失による196億円の減少です。これら特殊要因による減収が全体の2/3を占め、残りの1/3が顧客在庫調整の影響等に伴う減少228億円となります。また、営業利益は、これら特殊要因による52億円の減少と顧客在庫調整による販売減等に伴い28億円の減少となった一方、販管費は16億円減少し、64億円減益での着地となりました。
会社別業績
これを会社別に見ると、加賀電子は、スポット需要消失の影響が大きく、減収減益となりましたが、売上総利益率・営業利益率、いずれも前期実績と概ね同水準となっており、収益力自体は維持できていることが確認できます。
加賀FEIは、一見すると営業利益が大きく低下しているように感じられますが、スポット需要消失に加え、2024年3月期から開始したグループ内本社賦課費の計上や、特定取引先に対する貸し倒れ引当金繰り入れなど、一過性の特殊要因が大きく影響しており、M&A後、高収益体質を確実に身に付けてきたと考えております。
エクセルは、大口顧客向け売上の減少はあったものの、販売ミックス良化により収益力を高め、売上総利益率・営業利益率ともに大きく向上させています。
このような状況から、連結の売上総利益率はわずかながらも前期の数値を上回っており、持続的に「稼ぐ力」を維持し続けていると考えております。
在庫コントロールとキャッシュ創出力
在庫コントロールは当社の重要施策の一つとしており、その推移には絶えず目配りを利かせております。2024年3月期末の棚卸資産は、主要顧客の在庫調整などの影響の中、期中700億円前後で推移しておりましたが、仕入・調達の調整などに努力した結果、前期末比14億円減少の547億円となりました。一方、在庫回転日数は売上高の減少もあり36.8日と3日ほど悪化しているため、在庫削減の取り組みを強化、継続してまいります。
また、在庫削減に努めたこともあり、営業活動によるキャッシュ・フローは293億85百万円の収入、フリー・キャッシュ・フローは264億17百万円の収入となり、引き続き高いキャッシュ創出力を維持できていると考えております。
将来の成長投資に向けて、財務基盤の安定性を確保
創出したキャッシュを原資に借入金の返済を行った結果、有利子負債は前期末比76億68百万円減少の342億70百万円、D/Eレシオは利益獲得による自己資本の積み増しもあり、0.23倍と低く抑えられました。
現預金残高は前期末比で139億96百万円増加した665億96百万円となり、現預金の積み増しによってネットD/Eレシオは-0.21倍と前期末に引き続きマイナス値でさらに低く抑えられており、財務基盤の安定性・体質強化はますます盤石となっております。
自己資本の増加により自己資本比率は52.6%と財務の安定性は高まった一方、ROEは14.5%となり、資本効率はやや低下しております。
引き続き、より一層収益力を高めるとともに、創出した資金の活用について、M&Aを含む事業拡大投資、成長に向けた生産設備などの事業基盤や人的資本への投資、株主還元など、多角的な取り組みを実施し、「安定的に10%以上」としているROEの経営目標に対し、持続的な維持・向上を目指します。