IR(投資家情報)Investor Relations

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統合レポート 新たな成長ステージに入る、加賀電子グループのEMS事業


加賀電子グループは、日系製造業の海外生産を支える“最強の黒子集団”から、グローバルな最適地生産に伴走する“Global EMS Partner”へ―加賀電子グループのEMS事業は、11カ国24拠点を擁するネットワークをフル活用し、さまざまな国の製造業の“ものづくり”課題解決に貢献し、成長するステージへと更なる飛躍を遂げようとしています。


EMS事業はこれまで、 どのような成長を遂げてきましたか。

 当社は1968年、「電子部品・半導体の仕入販売」のビジネスをスタートしました。そして、経営理念である「すべてはお客様のために」を実践するうちに、必要な部品一式を取りそろえ、過不足や間違いがないかを確認するキッティングを行うようになり、さらに1970年代には、日本において協力工場を活用した加工取引へと広がり、現在のEMS事業の礎を築いていきました。
 そして1992年には香港に現地法人を立ち上げ、中国においても同様の取り組みを開始しました。1990年代は、急激な円高を背景に日系家電メーカーが相次いで中国生産にシフトしていった時期にあたります。
 こうして顧客基盤を広げていった結果、1999年には当社初の自社工場を中国・深圳に立ち上げ、以降、生産拠点をマレーシア(2000年)、タイ(2002年)、チェコ(2009年)、中国・蘇州(2009年)、インドネシア(2014年)、中国・湖北(2015年)、メキシコ(2016年)、ベトナム(2017年)、トルコ(2018年)、インド(2018年)、青森(2019年)、福島(2019年)、鳥取(2020年)、シンガポール(2026年)と拡大してきました。
 また、当初は家電製品が中心でしたが、90年代半ばからOA機器、2000年代半ば以降、産業機器、医療機器、車載関連へと、より高度で複雑、品質要求が高いモジュール、ユニットが拡大していきました。
 このようにEMS事業を伸長させてきた結果、いわゆる日系EMSでは、シンガポールとインドネシアを拠点とするシークス、自動車関連や産業機器に強いユー・エム・シー・エレクトロニクス(UMC)、それに当社を加えて“日系EMSトップ3”と呼ばれています。なかでも当社は、その収益性の高さが際立ちます。

(注) 当社、UMCは2026年3月期実績、シークスは2026年12月期予想。スミトロニクス、カトーレック2025年3月期実績(当社調べ)。

  *印は、上場会社


EMS事業の今後の成長戦略をお聞かせください

 ブランド企業が自社工場を持たない“アセットライト”経営にますますシフトするなか、グローバルなEMS企業が高い成長を遂げています。AI活用によるサプライチェーン変革が、この傾向を加速しています。
 こうしたなかで当社は、EMS事業の次の成長ステージとして、グローバルEMSの一角を狙う事業展開を加速していきます。
 具体的には、これまではほぼ日系のお客様であったステージを脱し、11カ国24拠点をフル活用し、中国系、米国系、台湾系の顧客獲得に邁進していきます。すでに、メキシコ拠点では米国の医療機器メーカーにユニットを提供しているほか、地元中国のお客様が生産拠点を東南アジアへシフトする傾向が顕著に出ています。
 一方、“脱中国”の影響を強く受けている中国では現地スタッフが地元企業の開拓に成果を上げており、車載系を次々と取り込みつつあります。コストだけで勝負せず、現地EMS企業では難易度の高い、ハイエンド領域を狙って展開しています。
 現在は、まさにグローバル顧客開拓の過渡期にあります。既存のEMS事業が好調に推移していることから、一定のリスクを認識しつつ、新規開拓のアクセルを踏み込んでいます。新たな土台づくりの成果、非日系のお客様に対する米国、中国における量産案件が今期、開始すると見込みます。今後5年程度で、非日系顧客比率を約50%まで引き上げることを目指します。


グローバルな顧客開拓をどのように進めていきますか。

 2026年、グローバルな顧客開拓を促進する拠点を相次いで開設しています。
 一つが、4月にシンガポールで稼働した新工場、KAGA(SINGAPORE)ELECTRONICSです。“人件費が高いシンガポールになぜ工場?”と感じる方も多いと思われますが、中身が違います。新工場は『自動化・省人化』のコンセプトのもと、中国の設備機器メーカーと協業して自社開発した基板実装設備『HATTEN』を導入し、増大する多品種小ロット生産ニーズに応える拠点であり、これら設備販売のショールーム機能、販売先オペレーターのトレーニング機能も果たしていきます。この新工場をフル活用し、欧米系メーカーのEMS調達窓口が集中するシンガポールならではの受注拡大を見込んでいます。さらに、まだ規模は小さいものの、『HATTEN』ブランド製品を軸とした当社グループの設備販売は、昨年の倍以上に売上を伸ばしています。
 受注にあたっては、コストが重視されるモジュール、ユニットについては、タイ(2002年)、マレーシア(2000年)、インドネシア(2014年)、ベトナム(2017年)の生産拠点をつないだ、アセアン地域における電子・電機機器の生産ネットワークを活用していきます。
 もう一つが、今後急速な需要拡大が見込まれる米国市場において、生産拠点のTAXAN MEXICO(以下、TMX)とKAGA(H.K.)ELECTRONICS(以下、KGHK)の共同出資により、新規顧客開拓・営業マーケティング支援の現地法人KAGA EMS AMERICAを、2026年7月新たに設立しました。深圳工場を通じて日系・欧米系企業に基板実装や完成品組立てなどの高品質なEMSサービスを提供してきたKGHKが、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の関税メリットを最大限に活かせるTMXと連携して展開する新規顧客開拓を、自動車産業が集積する地の利を活用し展開していきます。
 さらに、新興国で屈指の経済成長率を誇るインドでは、2019年、EMS事業会社KAGA ELECTRONICS INDIA(以下、KGIN)を設立以来、現地の有力EMS企業Syrma SGS Technology Limited(以下、Syrma)を戦略的パートナーとして事業を展開してきました。急拡大するインドにおけるEMS需要に迅速に対応するため、KGINとSyrmaとの間で合弁会社を設立し、シルマが2025年1月より稼働した第2工場の運営主体を合弁会社に移管し、業務を開始します。
 当社の生産改善のノウハウも共有しコストカットや収益性の向上を狙うほか、『HATTEN』もインドに導入します。現在生産活動を営むインド北部に加え、西部ならびに南部への生産拠点拡大も視野に、インド市場で展開するEMS事業を、5年以内に売上高100億円に伸ばす計画です。

(上)シンガポール新工場の内観
(左下)インド第2工場の外観 (右下)インド第2工場の内観


EMS事業では、どのような領域に大きな成長を期待していますか。

 一番注目しているのが、やはり、AIデータセンターに関わるビジネスチャンスです。AIの学習や推論といった高度な演算処理やデータ分析に特化したデータセンターであり、従来のデータセンターとは比べものにならない、膨大なデータを高速に処理して桁違いの電力と発熱を伴うため、大容量の電力供給システムや効率的な冷却技術、大容量のデータを速く転送できるネットワークが欠かせません。これに伴って、受変電設備、無停電電源装置(UPS)、高密度ラック、液冷装置などが必要となります。高収益が期待されるため、さまざまなプロジェクトを立ち上げています。
 中国ではAIデータセンター用電源装置の実装を開始する予定で、日本ではスターシーズ株式会社との協業により、AIサーバーの国内生産体制の立ち上げを進めています。タイのアマタナコン第3工場では、蓄電システム用インバーター完成品の生産を始めています。さらに、AIデータセンター向けの新たな電源装置の開発に取り組んでおり、その大掛かりな基板の実装に『HATTEN』を活用する方針です。誰もができる仕掛けではないため、高付加価値が期待できます。
 『HATTEN』は、多品種小ロット生産における競争力向上を目的に、加賀電子が自社開発した基板実装機器の製品ブランドです。一般的なプリント基板の実装ラインを構成する各種生産機器をラインナップし、外部顧客への販売も行っています。